こんにちは!現役薬剤師のりくたろーです。
薬局の棚卸作業ってすごく時間がかかって困っていませんか?
棚卸ってたいへんですよね。
薬局の調剤室にはたくさん薬の数があります。
これを全部数えるんだから気の遠くなるような作業です。

今月末は棚卸だぁ。。
毎年、棚卸の日が近づいてくるとりくたろーは憂鬱になっていました。
りくたろーの薬局は土曜日に棚卸をしています。
土曜日は薬剤師1人と事務さん1人の計2人態勢でお昼過ぎまで開局していますす。
棚卸のときは、午前中から患者さんの対応をしつつ棚卸作業も並行しながらで、いつも終わるのは夜の20時ごろでした。。
いつになったら棚卸は終わるんだと思い集中力が何度も途切れながら、果てしない作業をつづけていました。
りくたろーはそんな棚卸作業に疲れ果てたため、棚卸作業を見直すことにしました。
以前はこの2人態勢で棚卸は20時頃までかかっていましたが、棚卸の業務改革により土曜日の午前中の薬局開局時間中に棚卸を完了できています。
今回はりくたろーが棚卸を早く終わらすためにやっていることを紹介します!
たぶん大手の薬局は会社で棚卸手順がしっかり決まっていると思われるので難しいかもですが、個人経営などで細かく棚卸手順を決めてない薬局さんに向けお役立ちできればと思います。
薬局の棚卸を早く終わらすために大事なことは以下の3点です↓
- 調剤室の整理整頓
- 在庫をしぼる
- 棚卸前から在庫をチェックする
それでは、さっそく見ていきましょう!
タップできる目次
なぜ棚卸をしないといけいないのか?

そもそもなぜ棚卸作業なんてめんどくさい作業が必要なんでしょうか?
棚卸を行う目的は会社の業績をきちんと把握するためです。
会社がどれくらい利益をだしているかを計算するために棚卸が必要になります。
棚卸がどのように会社の決算にどのように関わっているか、もう少し見ていきます。
会社の利益を示すものに売上総利益があります。
売上総利益とは、会社の基本となる利益であり、人件費や広告費などの経費や税金などを差し引いていないため「粗利」とも言われます。
売上総利益=売上高-売上原価 で計算します。
実際に会社が売り上げた金額から売り上げたものにかかった原価を引くことで、会社がどれくらい稼いだかを知ることができます。
先ほど売上総利益を求める計算式ででてきた「売上原価」は下記のように計算します。
売上原価=期首の在庫金額+今期の仕入れ金額ー期末の在庫金額
期首の在庫金額=前期の棚卸で調べた薬局の在庫
期末の在庫金額=今期の棚卸で調べた薬局の在庫ですね。
これにより今期の売上原価がわかります。
売上原価の計算は仕入れた薬品の金額ではなく、今期売り上げた(処方がでた)医薬品で計算します。
今期の棚卸で調べた医薬品(処方としてまだでていない薬品)は、売上があがったわけではないので売上原価という費用ではなく期末在庫という資産になります。
売上原価を知るために棚卸で在庫金額を調べることが重要で、そこから会社の売上総利益(粗利)を計算するんですね!
それでは、棚卸作業の意義を理解したところで棚卸作業を早く終わらせるためにりくたろーが実際にしている工夫を紹介します!
調剤室を整理整頓する

棚卸作業の時短をするのであれば、まず調剤室の整理整頓が大切です。
りくたろーが現在の薬局に来た時には、はっきりいって薬の整理整頓が雑でした。
1つの調剤棚に3~4種類のくすりがはいっており、調剤棚に入らない未開封品は別の棚に置いてあるといった感じでした。
これだと棚卸の際、調剤棚の薬を数えてから未開封品をさがしてと2度手間です。
そこで未開封品も含めて1つのくすりは1カ所にまとめて保管するように整理しました。
また、近隣医療機関の頻用薬がかわったり、ガイドラインの変更があったりで数年前はたくさん処方がでていたけど今はほとんどでなくなっている薬もあります。
棚卸を機にあまりでなくなった薬は下の引き出しにしまい、よく出るようになっている薬をとりやすい場所にもってくるように整理します。
調剤室の整理整頓ができていないと、棚卸作が煩雑になりますし、調剤ミスの原因にもなります。
棚卸を機会に調剤室を整理しましょう!
在庫をしぼる

棚卸作業を簡単に終わらせるためには薬の在庫を絞ることが大切です。
何で在庫をしぼった方がいいのかって?
在庫を絞れば単純にかぞえる薬の数が減る→時間短縮につながるからです。
棚卸時短のために棚卸日にむけて在庫をしぼりまくりましょう!
棚卸の時短に一番重要です。
それではそのように在庫をしぼるのか5つの方法を紹介します。
毎回90日分のくすりをもっていかれるような長期処方の薬をまずはチェックしましょう!
たとえば医薬品Aを毎回90日処方される患者さんがいる場合、他の医薬品Aを飲んでる患者さんは1か月処方なのにその90日分持っていく患者さんのために発注点が高く設定してることはないですか?
長期処方の患者さんが1人いるだけで発注点が高くなっている薬品はあちらこちらにみられます。
90日の長期処方の患者さんは3か月に1回しかこないので、棚卸日までに次の来店がないようであれば発注点を大きく下げられます。
薬局のくすりの在庫数がたくさんある原因にもなっていますが、1人とか2人にしかつかってない薬は必ず存在します。
- 変更不可のチェックあったり、患者さんの先発希望があったりでどうしても1人だけ先発品で調剤しないといけない場合
- 患者数がすくない疾患の薬のため他の患者さんには処方されそうにもない薬
- 最近の処方ではあまり見ないが以前からずっと服用している長期収載品
このような薬があてはまります。
その患者さんの次の来局日が棚卸日以降であれば、そこで発注ストップです。
りくたろーは棚卸日の2週間前くらいから自動分包機への充填を控えるようにしています。
棚卸日に分包機に薬品がたくさん充填されていると数えるのに時間かかりますからね。。
分包機用にバラ包装1000錠などでとっている場合、棚卸日近くになり発注があがった場合は、PTP100錠包装などでとるようにします。
1000錠包装がちょっと空いただけで棚卸日に900錠以上残っていると数えるのがめんどくさいです。
棚卸日に自動分包機のカセッターにできるだけ薬がはいっていないように調整しましょう。
在庫を絞ることにより数える錠数や品目数が減るという点が大切ですが、期末在庫の金額を下げることも重要です。
ですので、薬価の高い医薬品は期末在庫を特に気をつけます。
1錠10円のくすりを200錠在庫減らしても、
10×200=2000円 と2000円の在庫金額減です。
しかし、1錠200円のくすりを10錠在庫減らせば
200×10=2000円 となります。
薬価200円の薬を10錠在庫を減らしただけで、薬価10円のくすり200錠減らしたのと同じ金額の在庫金額を減らすことができます。
ですので在庫金額を減らすには薬価の高い薬を要チェックするのが効率いいです。
薬価の高いものは必ず小分けがとれます。
100錠包装をとると棚卸日までにかなりあまってしまうと予想される場合は、卸の小分けを利用し棚卸日までにギリギリにします。
どの薬品の在庫金額が高額なのか薬局の在庫の薬品を金額ベースで並び替えて一度確認してみましょう!

在庫をしぼり在庫金額を減らせば、節税対策になるとおっしゃる薬剤師もいます。
結論からいうと、在庫の金額を減らしても税金対策にはなりません。
先ほども書いたように、今期の棚卸で調べた医薬品(処方としてまだでていない薬品)は、売上があがったわけではないので売上原価という費用ではなく期末在庫という資産になりあます。
現金(キャッシュ)も資産です。期末在庫も現金も同じ資産になります。
在庫をしぼって期末在庫を少なくし、その分現金という資産で持っていた方がいい理由としては、会計士さんや、銀行への印象がよくなることです。
社長のメンタルヘルス的にも現金を多く持っていた方がいざ急な出費ができたときに資金繰りがつまらなくてすむという安心感もあると思います。
棚卸で調べる期末在庫は資産ですが、たくさんあってもすぐに現金化することは難しいですからね。
もう一度言いますが、在庫金額をいくら減らしても節税にはなりません。
しかし、棚卸業務の時短のためにも在庫を減らすことは重要です。
発注点を設定していても気がついたら患者さんの薬が変更になっており、使用されていない薬があります。
棚卸を機会にこのような不動在庫の整理をしましょう!
りくたろーは1年以上動いてない医薬品は不動在庫として返品や処分を検討します。
1年以上動いていなくても抗生剤や解熱鎮痛剤など臨時処方ででることがあり、すぐに必要となる薬は残しておくようにします。
不動在庫のうち返品でいるものは返品し、返品できないものは不動在庫として処分します。
棚卸前に在庫を絞るために発注点を変更したものは、必ずメモをして棚卸完了後すぐにもどすようにしましょう。
りくたろーはいつもサンプルで送られてくる薬手帳をメモ帳代わりにします。
そこに発注点を下げたものをメモしています。
発注点をもどしておかないと棚卸の翌月に欠品がでまくるので、棚卸がおわり、翌月になれば、発注点をもどしましょう!
これらを実施するとで、金額ベースで通常の月末在庫から30%減くらにすることができるはずです!
棚卸時に在庫をしぼって、在庫をしぼるコツをつかんでいれば、薬価改定の際に役立ちます。
薬価改定になれば薬価は下がります。
2016年度の薬価改定では薬剤費ベースで約7.8%の削減、
2018年度の薬価改定では薬剤費ベースで約7.5%の削減になりました。
薬局により在庫している薬の種類がちがうので一概には言えませんが、薬剤費ベースと同じ割合で薬価が7%下がったとします。
すると、薬局の在庫が500万円あった場合
3月末までは500万円の価値のあった医薬品が薬価改定で7%価値がさがります。
ですので4月になれば、
500×0.07(7%)=35となり35万円分在庫の価値が下がります。
このロスをできるだけ抑えるために薬価改定のときは在庫をしぼれと上から指示が来ます。
同じものを在庫しているのに月が替わるだけで35万も価値がさがるなんて薬価改定はおそるべしです。
普段の棚卸から在庫をしぼるようにしてると、薬価改定のときに対応しやすくなります。
棚卸前から在庫数をチェックする

在庫をしぼっていても棚卸日に薬品を数え始めると時間かかります。
散剤は、棚卸日に1つ1つ計量していたらすごく時間がかかります。
時間を短縮するために、棚卸前から数をチェックしましょう!
では、棚卸前から数をチェックするためにはどうすればいいでしょうか?
りくたろーは棚卸在庫確認済みシートをつくって、数えた薬品にそのお札を貼っていっています。
棚卸2週間前から棚卸日までにでないと思われる薬の数を数えていきます。
薬の数を在庫確認済み用紙に記入してセロハンテープで貼っていきます。
患者さんが途切れたときなどのスキマ時間にどんどん数をチェックしてシートを貼っていきます。
まずは、計量に時間のかかる散剤、液剤を量ります。
次にあまりでない錠剤を数えていきます。
棚卸日が近づくにつれ、数えれる医薬品も増えていきます。
棚卸日までに8割以上かぞえ終わるようにすすめます。
もし、棚卸日までに数をチェックした薬品がでた場合は、在庫確認済みのチェック用紙をはがすか、処方後の数を上書きして書いておくようにします。
この作業を忘れると棚卸の数があわなくなるので、薬局内のメンバーに周知しておくことが大切です。
棚卸表に記入していくのは前日からにします。
りくたろーの場合、棚卸は土曜日に行うので、金曜日の午後、患者さんがおちついた段階で棚卸表を出して記載し始めます。
棚卸表を出したあとから来た患者さんに出た薬は、棚卸表と実在庫が違ってきます。
ですので棚卸表を出してからこられた患者さんにでた薬は、棚卸終了後に再度確認するようにします。
まとめ

薬局の棚卸の時短対策はいかがだったでしょうか?
薬局の棚卸は単純作業ですが心理的負担が大きい業務です。
棚卸の時間を短縮するために、棚卸日までにしっかり準備をすることが大切です。
- 薬品を数えやすいよう調剤室の整理整頓
- 薬局の在庫数を少なくし、数える量を減らす
- 棚卸前から動かない薬品を数えてチェックしておく
棚卸の時間を短縮する方法は結局、棚卸業務でやることをできるだけ前に済ませておくといった感じですね。
しかし、棚卸日にあとこれだけやれば終わりだというゴールがみえているのとゴールがみえない状態では気持ちが全然違います。
そして棚卸で在庫をしぼるコツをつかんでいると薬価改訂で在庫をしぼるときも役立ちますよ!
薬局の棚卸で他にもこんな工夫をしているよというのがあればコメント欄よりぜひぜひりくたろーに教えてください!
それでは今回はこのへんで!最後まで読んでくださりありがとうございました!